『筒描』は、渋紙の筒に防染剤の糊をいれ、生地に絞り出しながら文様を描いて行く染色の技法のひとつです。 藍染めの筒描では鮮やかな顔料で彩色されたものもあり、その色合い、おおらかな文様の美しさは、かつての生活に密着しており、様々な祈りが込められたものでもありました。
藍染めの筒描は、のれん・ゆたん(タンスカバー)・はんてん・布団地など日常品や大漁旗やのぼりなど、庶民の日常生活のなかで欠かせないものでした。嫁入り道具や慶事に誂えられた筒描は、送り主から富貴、福寿を願う気持ちが「松竹梅」、「鶴亀」、「鳳凰」、などの吉祥文様に込められていました。藍染めが盛んに行われ、木綿が普及した江戸中期から大正にかけて庶民の生活の中に彩りをそえてきました。筒描は日本独特のもので庶民染色の源流と言っても過言ではないと思います。現代ではほぼ見ることがなくなってしまった藍染の筒描きの伝統的な美しさと味わいをもっと多くの方に知っていただき、再認識頂ければと思っています。
藍染筒描「Japan indigo beautiful island」 〜藍色が美しい島国 日本〜
素材:綿 サイズ78x124cm 2016年制作 八百万の神々が鎮座する、藍染が良く似合う美しい島国、日本。 今でも同じ、時代が変わっても脈々と続く「美意識」みたいなモノを再認識したく、スカジャンに施された刺繍の文様(海外から見た視線を意識して) から日本らしい独自のものをモチーフに筒描で制作しました。
藍染筒描「唐獅子牡丹」
百獣の王といわれる獅子。邪気を祓うとして好まれ、 百花の花、牡丹と一緒に意匠化されました。 多くは能楽「石橋(しゃっきょう)」を題材とされ 天下泰平千秋万歳の祈りが力強く舞う獅子に込められていると いわれます。 「如師子身中蟲、自食師子肉」という言葉もあり 百獣の王、獅子にも己に潜む「獅子身中の虫」 仏教では「裏切り」の事らしいですが (自分は「弱気」と解釈しました) 内側からやられてしまう事がある、という。 これを戒める力が、牡丹の花からしたたる夜霧にあり 牡丹の中を踊る図になったとも言われるそうです。
素材:綿/麻 サイズ:約90x152cm 2010年制作
藍染筒描「鶴亀松竹梅」
吉祥文様の代表格、松竹梅に鶴亀を配置しお目出たさがより強調された瑞祥文様。「鶴亀松竹梅」柄の筒描はかつて慶事、結婚、出産などに飾られ、行事や儀礼の中で人々の祈りが込められました 。鶴はめでたい前触れを知らせ、その羽は清浄を意味するといわれます。万年の年を生きる霊亀は海藻が蓑の様に付着した姿で描かれ、未来を予知する能力を持つと言われていました。 風雪に耐え、常緑の姿を長寿や忠実心、力強い男性を意味しているといわれる『松』、無限の繁殖力と節をもち誠実さを意味する『竹(笹)』、万花に先駆けて咲き高貴な『梅』 生地の白さと藍の濃色との対比が美しく、差色の顔料がそれぞれのモチーフにふさわしいアクセントになったと思います。
素材:綿/麻 サイズ:約84x140cm 2009年制作
藍染筒描『猛虎』
周囲の五毒(貪、憤、痴、慢、疑)を除き、邪気を圧すという『猛虎』2006年に制作した『青龍』と相対して『龍虎図』となるように制作しました。 麻のざっくりとした独特の風合いをもつ生地を使用し、藍の中色は藍返しで表現したのですが予想以上にきれいな染まりでした。 最後の洗いで「猛虎」の黄色味の顔料の定着が悪く、竹薮に逃げられそうになった虎を、最後に必死に捕まえる様に色をさしていきました。図柄は筒描資料の柄をアレンジしました。 素材:麻/綿 サイズ:90x126cm 2007年制作
藍染筒描「青龍」
龍は蛇身、頭はらくだ、角は鹿、目は兎、耳は牛、腹は大蛇(みずち)、鱗は鯉、爪は鷹、手は虎ににているといわれ、背には八十一枚の大鱗が隆起するという。多くの動物の要素をを集結させ最強の力を備えた聖獣、自然界の圧倒的なエネルギーの象徴。 「鯉の滝登り」の続編として龍を制作しました。制作中は困難な出来事が続き、改めて「龍」というカタチに宿された不思議なエネルギーに対峙する事になりました。
(筒描と絞染めの併用)
素材:綿/麻 サイズ:約84x120cm 2006年制作
藍染筒描 染裕文様
万祝(江戸時代頃の漁師が着た法被)の文様と真中の「ひろ」の意匠は
芹沢銈介のいろは文から影響を受け染裕文様は生まれました。